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静岡地方裁判所 昭和26年(行)9号 判決

原告 植田小十 外四名

被告 地頭方村農業委員会・静岡県知事

一、主  文

被告農業委員会の別紙目録第一乃至第七記載の土地に対する昭和二十二年八月十七日附買収計画の無効を確認する。被告静岡県知事の右土地に対する昭和二十二年十月二日附買収処分の無効を確認する。

訴訟費用は被告等の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、別紙目録第一記載の土地は原告植田小十の所有地、同第二乃至第七記載の土地は原告五名が五分の一宛の持分を有する共有地であつたが、被告農業委員会(当時農地委員会以下同じ)は昭和二十二年九月二十五日附で右土地を含む二十九筆の土地に付未墾地買収計画を樹立したとして静岡県農業委員会(当時農地委員会以下同じ)へその承認を申請し、同委員会は同年九月二十八日これを承認し、被告静岡県知事はこれに基いて、別紙目録第一乃至第七記載の土地に対し、昭和二十二年十月二日附原告植田小十宛買収令書をその頃同原告に交付した。ところが、本件係争土地に対する買収計画については、昭和二十二年七月三十日被告農業委員会において、審議されたが、「適否実地調査せるも、決定不可能なりしため、決定を延期し、再審議と決定」され、その後もこれを定める議決はなされないのに、誤つて未墾地買収計画書中に記載せられ、適法な公告もなされないで、爾後の手続が進められた。これが為外形上本件土地に対し買収計画なる行政処分が存在するが前記の如く買収の議決がないから無効である。また本件係争土地に対する静岡県知事の昭和二十二年十月二日附買収令書に基く買収処分も亦、その基礎たる買収計画について前記瑕疵があるので無効であるが、右買収処分中、別紙目録第二乃至第七記載の土地に対する部分は、これらの土地が原告五名の共有であるにも拘らず共有者の一人である原告植田小十のみに対して買収処分がなされたので、この点からも無効である。尚、行政処分無効確認訴訟は行政処分の違法を攻撃してその無効の確定を求める点において、行政処分の取消変更の訴訟と共通の性格を有するので、当該処分庁を被告とすることができると述べた(立証省略)。

被告訴訟代理人は、本件訴を却下する旨の判決を求め、その理由として被告両名は国家の行政庁であるからそれ自身固有の人格を有するものではない。民訴法第四十五条によれば「当事者能力ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外民法其ノ他ノ法令ニ従フ」と規定されているが原告が本件において請求する行政行為乃至行政処分の無効確認について行政機関を相手方として訴訟を実施しうるとなす法令の根拠がないので、行政処分の無効確認を求める訴において行政機関たる被告は当事者能力がない、従つて本件訴は許されない。と述べ本案につき請求棄却の判決を求め、答弁として原告主張の買収計画の樹立買収令書交付の事実は争わないが別紙目録第二乃至第七の土地が夫々原告等五名の共有であることは否認する。本件土地は植田家世襲の山林であり、原告五名は親子或いは夫婦の関係にあるものであつて、農地改革の強化された昭和二十一年七月以降、形式上分家或いは離婚し別紙目録第二乃至第七記載の山林は、これに応じて登記簿上原告五名の共有とせられたものであるが、この戸籍簿並びに登記簿上の形式は、農地法による買収を免れる目的で仮装されたもので、事実に反し真実は原告植田小十の単独所有である。故に、被告農業委員会は本件土地はいずれも原告植田小十の単独所有地と認め、これに対し、昭和二十二年八月十七日適法に買収計画を定める議決をなし、その頃これを適法に公告し、爾後原告主張のように手続を進めて適法に買収した。従つて本件請求はいずれも理由がないと述べた(立証省略)。

三、理  由

本件地頭方村農地委員会に対する訴は、農業委員会法の施行に伴う関係法令の整備に関する法律附則第三項により地頭方村農業委員会に対する訴と看做される。

被告適格について。

行政処分無効確認訴訟と取消訴訟とは、共にその違法を攻撃して無効を確定する点において共通の性質を有するので、前者についても行政事件訴訟特例法第三条を準用し、処分をした行政庁を被告とすることができるものと解するを相当とするから被告の本案前の抗弁は採用し得ない。

議決の存否について。

被告両名は、昭和二十二年八月十七日本件買収計画を定めたと主張するが、この点に関する証人松下彦一郎同小塚秀夫同増田正治の各証言及び乙第二号証の二、三同第四号証の記載部分は何れも後記各証拠と対比して信用し難く他に該事実を確知するに足るものはない。却つて成立に争いのない甲第十、十一、十三号各証第十四号証の一、二及び原告植田小十本人尋問の結果を総合すれば、本件土地に対する買収計画は、昭和二十二年七月三十日被告村委員会第十四回会議において、「適否実地調査せるも決定不可能なりし為決定を延期」「八月八日迄に審議のことと決定」したまま、その後開かれた四回の会議においては審議されないで同年八月十七日に至つたこと、而して右八月十七日午前八時より開かれた被告委員会の第十九回会議においては、終日多数の耕作権移動申請につき審議されたが原告等主張の本件係争山林について買収計画を定める議決はついに行われなかつたことを窺知することができる。

果してそうならば本件買収計画はその手続の過程において重要なる基礎をなす村農業委員会の買収の決定を欠くから当然無効なるものと断ずるの外なく、従つてこれに基いてなされた本件買収処分もまた他の点について判断するまでもなく当然無効と言わなければならない。よつて原告等の請求はすべてこれを認容すべきものとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条第九十三条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 戸塚敬造 田嶋重徳 土肥光圀)

(目録省略)

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